2014年8月23日土曜日

善意の暴走。


ここ数日、テレビのワイドショーやインターネットで、「芸能人の〜〜が、スポーツ選手の〜〜が、氷水を頭からかぶった」というニュースをよく見ます。


これは、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) という病の、研究支援への寄付を募ることを目的とし、アメリカから徐々に広まった、“アイス・バケツ・チャレンジ” という名の、慈善活動です。

ALSという難病をもっと多くの人に知ってもらうために、少しでも多くの寄付金を集めるために、世界中のたくさんの著名人たちが、この活動に参加しています。その志は、本当に素晴らしいことだと思います。


しかし僕は、反対です。この活動には、大きな違和感を覚えます。なぜ、氷水を浴びる必要があるのでしょうか? 世界には、飲み水がなくて、もがき苦しみながら困窮している人が、たくさんいます。そういった人々を救おうと、寄付を募っている団体もあります。寄付を集めるという、慈善の精神と、水を頭から浴びるという行動には、大きな矛盾があると思いませんか? もっと他に、効果的な方法はなかったのでしょうか? たとえば有名人が各々、変わった特技を披露するとか。



僕は3年前に、震災ボランティアに参加させてもらった際、期間が長かったので本部の所属になりましたが、一部の方々の行動には、本当に辟易していました。

自分が持ってきた支援物資を、許可なく被災者に配り始める者(ちゃんと順番があり、管理もしています)。

たくさんいた被災児童の、“一人にだけ” ニンテンドーDSを買い与えた者(当然、ケンカになりますし、せっかくボランティアとたくさん接していた子供たちが、以降はDSにのめりこみました)。

泥だらけの靴で、ズカズカと土足で勝手に避難所に入る者。

・・・挙げたら、キリがありません。


信頼していた仲間にも、被災者に軽トラックを寄付するプロジェクトを立ち上げた者がおり、僕も賛同して協力していましたが、いざ軽トラを寄付するという時に、そこにプロジェクトで作ったステッカーをペタペタ貼ると言う。「なんでわざわざ、そんなことするの?」と聞くと、「私たちの思いを残したいから」との解答。僕はそれが、非常に頭にきて、大げんかし、彼女とは完全に縁を切りました。



僕は、“善意の暴走” が、大嫌いなのです。「善いことをしよう」という志は、もちろん素晴らしいのですが、「善いことをしているのだから、文句は受け付けない」では、ダメなのです。

善意というものは、たくさんの配慮が必要です。柔軟な思考も必要です。善かれと思ってやってはみたが、批判意見が多かった。逆に人を、傷つけてしまった。
→・・・では、やり方を変えてみよう。
このバランス感覚が、大事なのです。


このALSの慈善活動でも、例えばタレントの武井壮は、水浴びの指名を拒否し、「この分はALSに限らない難病支援や、水不足や衛生に関する支援に回します」と表明しました。俳優の金城武は、あえて飲み水ではない排水を浴び、誰も指名せず、「チャレンジは必要ない。身の回りにいる助けを必要としている弱い立場の人々に、あなたの心からの思いやりが届きますように」と書きました。


こういう価値観、バランス感覚のある人と、僕は心を通わせたい。


インターネット上では、賛成派から否定派への意見には、「この活動を批判する奴は、心が貧しい奴だ」といった、人格否定のようなものが多い。

なんだか、タメ息が出ます・・・。